第60話:オールドレンズの光学系に対する、まるでピュアな疑問ばかり、ばかり・・

🅲

昨年末からの6ヶ月間の時間を費やして、オールドレンズの光学系に関する勉強や探求に自ら挑戦し、以下のような項目で解説できるようになりました。

全てを理解している専門職のお立場にある方々の説明に比べ、特に当方のような何一つ理解できていないズブズブなドシロウトが探っていったほうが、その難易度の感覚やそもそもの目の付け所の
違い (まるで分かっていないから、気になる探求の角度からしてまるで違っている) に着目して、このように探求を進める考えになりました。

・・いわゆるドシロウト的に真正面から挑んでみたら、どうなるのか??? 的な企みです(笑)

その意味で、同じ、或いは近い境遇の方々との共有化の一助になればとの思いだけで、探究心を無理やりたぎらせつつ挑んでいますから、不理解や思いちがい、或いはまるで間違った方向性や受け取りなど散見しますが、どうかご容赦下さいませ。できましたらご親切な方に改めてご教授賜れば、誠に幸せなことで御座います。その時は即座に訂正しお詫び申し上げます。

特に以下 🅰 から始まり、最後の 🅻 までの解説の中で、果敢に挑戦した主題の一つは「オールドレンズのコーティングは、それ自体が反射しているのに、どうしてその状況の中で光は透過できるのか???」との、まるでドシロウト、且つ純粋な問いかけに対し、妥協なく真正面から納得感を得る目的で挑戦している為、きっとオモシロイと思います(笑)

もっと言うなら、その問いかけに対してマジッに真顔で「何でコーティングなんかして反射させて光の透過を妨害するのョ??? その反射した光だってもったいないんだから、100%透過させなさいョ???」みたいなアホな疑念を大前提に、それを覆す試みとして挑んでいますから、そんくらいアホな当方の疑念であること・・・・・・きっと・・・ご覚悟召されい。

大変ありがたいことに、実際に閲覧頂いた方々の評判は意外にも良く(汗)、もちろん超長文なので一気読みできないにしても「内容が面白すぎてとても楽しい」とか「グイグイ引き込まれる感じで、またもう一度読みたくなる」或いは「まるで雑誌を読んでいるような感覚になる」・・など、メールを頂戴しています(涙)

・・ありがとう御座います(涙)

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《 目 次 》
🅰
ガラスの発見・・
🅱 石英と石英ガラスの明らかな違い・・
🅲 不純物が極端に少ない合成石英ガラスの精製とは・・
🅳 そこから視えてくる光学硝子レンズの表層変質・・
🅴 光とは・・
🅵 反射とは・・
🅶 色とは・・
🅷 屈折とは・・
🅸 反射防止と蒸着膜厚との関係・・
🅹 より具体的な反射防止コーティングで捉えると・・
🅺 MgF2は、蒸着コーティング層の中で何処に居る・・
🅻 反射防止コーティングに使う資料とは・・

上に挙げた 🅰🅻 の項目は、すべてが1つの閲覧ページの中で「それぞれが項目として」連続的に繋がっています。 🅰 〜 🅳 は無料閲覧項目です。だれでも無料で読むことができます。

一方 🅴🅻 は全て有料閲覧項目になります。これら有料閲覧項目は、1つでも項目記事を購読 (支払い) 頂くと、他の全ての有料閲覧項目 🅴🅻 が、どれでも、いつまでも永続的に閲覧できるようになります (つまり一番最初の購読の時だけ支払いが1回だけ発生します)。

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各項目の簡単な内容をご案内します。

🅰 🅲 は、光学ガラスレンズの材質の発見に至る歴史を簡単に述べ、且つ光学ガラスレンズのもととなる材料の特徴と精製について解説しています。さらに 🅳 では実際のオールドレンズの光学系を例に挙げて、それら光学ガラスレンズがどのように劣化していくのかを (試しに) 無料で詳説しています。

従って 🅰 🅳 をお読み頂ければ、以降の 🅴🅻 有料閲覧項目がどの程度詳しく、且つ分かり易く説明されているのかを知ることができると思います。

また反射防止コーティング層の解説には、例としてMINOLTA製オールドレンズを挙げて、当方が今までオーバーホール/修理など整備してきた体験から、まさに『緑のロッコール』たるアクロマティックコーティング層が「光学清掃だけで剥がれていく根拠の追求」に挑んでいます。その探求を深めることで、結果的に世間一般で言う処の「ARコーティング (反射防止コーティング全般を指す総称)」についての研究を深化させています。

その際 Carl Zeiss のレンズカタログや、ネット上の光学専門サイトの情報も自ら勉強した上で活用し、その説明も交え研究とその深化に果敢に挑んでいます。

なお、🅴🅷 有料閲覧項目を読み飛ばしてしまった場合、それ以降の 🅸🅻 有料閲覧項目について、記事の内容を理解するのに多少の支障があるかも知れません。できる限り順番に読んでいかれることをお勧め申し上げます。

これら 🅰🅻 の項目全てを読み終わる頃には、きっとお手元のオールドレンズ達が放つ蒸着コーティング層の光彩について、確かな知見を得られていると思いますから、より一層愛着も増していくことと思います。

項目の中には、現在ネット上の至るところで解説されている「ハードコーティング/ソフトコーティング」についても触れ、それらの概念とオールドレンズの蒸着コーティング層との関連性にも言及していますから、言葉尻や感覚的に捉えた「ハードだから清掃しても大丈夫」との認識の危険性などにも警鐘を鳴らしています。

・・1本でも多くの個体を『絶滅危惧種』の脅威から救っていきましょう!

ちなみに、これから再び1年ほどの時間を費やして、🅼 以降の「光学の収差に関する勉強と研究」を進めていく予定です。さらに最後のほうでは「当方のオーバーホール/修理作業の真髄たる、整備技術の公開解説」まで話を進めていく予定ですが、相応の時間を要する為、再び有料閲覧項目として、別ページで掲載する計画です。それによって初めて光学設計や光学系構成図、或いはそもそもの特許出願申請書などの記述すら、理解が進むものとの期待を込め、これから勉強していくつもりですし、整備技術の公開によって「間違った整備の撲滅」すら視野に入ってくるワケで、きっと皆様にも有益、且つユニークな情報提供として仕上げられると意気揚々としています。

総工程1年半がかりの、当方にとっては真に壮大なプロジェクトになりますが、自身の『引退』を控え有終の美を飾りたく、憶することなく果敢に挑んでいく所存です。どうぞご期待下さいませ。

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🅰 ガラスの発見・・

そもそもガラスはいったいいつ頃登場した素材なのでしょうか。

火山から噴出した溶岩がガラス状に固まった「黒曜石」は、石器時代から活用されていましたし、珪砂に落雷して生ずる「閃電岩 (ぜんでんがん)」或いは、隕石の衝突により生成される「テクタイト」などが天然由来のガラスとして顕在しますが、これらは基本的に不透明です。

一方で紀元前3700年頃には、古代エジプト人がガラスの装飾品や質素で簡素なガラス製品を造っていたことは、当時の遺跡から発掘される遺物で明らかになっていますが、現存する最古のガラス容器は、古代エジプト第18王朝6代目の王であった「Thutmose (トトメス) 三世」のカルトゥーシュ (王名) が含まれる、コアガラス技法によるガラスの杯と認定されています[1]

古代のコアガラス技法とは、芯材 (石膏など) の周りに溶かした硝子材を巻き付けて整形させ、徐冷後に芯材を抜き取る技法です。

当時古代エジプトの文字といえば一般的にヒエログリフ (聖刻文字) を指すため (文字がまだ存在しない時代)、いわゆる象形文字、且つ表音文字でもあるが故に、その体系が複数存在しその解読はとても複雑です。或いはそもそも当時の発音を継承できていないとすれば、その諸説には頼るべき根拠が複数介在してしまいます。

右図はトトメス三世のカルトゥーシュを表しますが、これを発音すると「ネスゥビト・メン・ケペルゥ・ラー」になり (表音文字なので発音することで伝達させる手法) これが即位名でもあるようです (トトメスの呼称は誕生名であり、sa-ra zhwty-ms-s:サラー、ツウィティメッス、さらに翻字してthut-ms、トトメスに至る)。

何で一番最後に「フンコロガシ (スカラベ)」が居るのかと言えば(笑)、実は太陽神ケペルゥの化身として「創造・再生・復活」の象徴とされているからです。自分のカラダよりも特大な糞を丸めて転がすのを例えて、太陽が天空を運行する様子に当てて太陽神の象徴とされていたようです(汗)・・土まみれになって健気に必死に転がすフンコロガシ、恐るべし!(怖)

・・きっと地上の数多のフンコロガシのおかげで、また太陽が昇るのですョ!(祈)

太陽が沈んだ後、夜の帳に、一斉にスカラベが「昇れ!昇れ!」の掛け声のもと、糞を転がすのです(怖)

従って右上に示したトトメス三世のカルトゥーシュを上から順に発音してみると「ラー・メン・ケペルゥ (ra-mn-xpr)」になるようですが (一字子音発音文字なので、発音に際しては文字間に母音を代入する必要がある)、まだ駆け出しなので順番がヒックリ返る理由が分かっていません・・然しエジプトも奥が深く複雑で興味津々なのですッ!(笑)

・・そこで天然ではない、人工的精製で造られたガラス基材の登場時期を探ってみました(笑)

すると遡ることローマ帝政時代 (西暦79年頃)、ローマ帝国軍人、博物学者兼政治家でもあったガイウス・プリニウス・セクンドゥスと言うローマ西部艦隊司令官が、ヴェスヴィオ山噴火によるポンペイ壊滅に遭遇し、自ら出向いて火砕流サージにより死亡したものの、それまでに自然と芸術に関する著書『博物誌37巻』(右写真はwikiより転載) を遺しており (世界で初めての百科事典) この中の記述によれば、当時のフェニキア人 (現シリアの一部地域で旧カナーンと呼ぶパレスチナ域系の古称とその民族) がイスラエルのヨルダン川を商船で下っていた際、砂州で野営する時に手頃な石が無かったことから、商品として積載していた「天然ソーダ塊」を積み上げて焚き火し調理しました。

その時、偶然にも砂州の石英砂と天然ソーダが混ざり合って溶けて流れ出し生成されてしまったのが「人工的なガラス精製術の大発見」だったと言われています(笑)・・従ってその後には当地フェニキアは近隣国はもちろん、遥か遠方の国ともガラス材で交易し稼げていたようです。

つまり「天然ソーダ塊 (炭酸ナトリウム) + 石英砂高温度帯 (300℃〜600℃)」と言う3つの前提条件が、たまたま偶然に揃ってしまった事が起因していると説明できるのです(笑) 然しせいぜい600℃程度の高温度帯なので、はたして真に透明ガラスだったのかは謎です。

このように具体的な一次資料を基に研究を進めると、より一層ガラス基材の精製について確信を持てることに至りますね(涙)

🅱 石英と石英ガラスの明らかな違い・・

石英ガラス」は驚異的な透過率により、紫外域〜赤外域までを包括する波長域に対応できる光学硝子基材でガラスです。そして現在に於いても、最も一般的、且つ普及しているガラス素材です。

一方「石英 (SiO2)」は、珪砂 (けいしゃ) と呼ぶ二酸化ケイ素 (SiO2) 或いはシリカとも呼称する「結晶の一つ」であり砂です。自然界にも存在し「水晶」として親しまれています。このような水晶で六角形に純度が高ければ透明ですが、不純物 (マンガンやチタンに硫黄、或いは鉄) などを含有してくると黄色紫色紅色などの色合いを持ち、或いは微細な気泡が含まれていると白濁しています・・光学硝子レンズとして活用する場合、これらの着色は特定波長の入射光透過を遮る要因に直結するため、光学硝子レンズには不向きと言う話になります。

他方「ガラス (硝子)」は結晶構造を持たない非結晶質材 (アモルファスに同義) なので、準安定状態であり、原子や分子が規則正しい配列 (結晶構造) を持たない物質の状態を指します。従って資料 (ここで言う資料とは石英や水晶など加工する対象材料を指す) に熱など加えると構成する分子がエネルギーを獲得し、より安定的に「ガラス転移してしまう/ガラス質に変異する」為化学的に捉えた時、このコトバ「石英ガラス」は「結晶である石英非結晶質材の硝子」との矛盾を含んでいるコトバであるとも指摘できてしまうのです(汗)

《ガラスの定義》
一般的な定義:珪酸塩ガラス (SiO2) を指す
化学的な定義:非結晶質物質の中でガラス転移を示す物質をガラスと呼ぶ
この状態を指して「ガラス状態」と把握する

「ガラス転移」とは、温度を加えた時にアモルファス個体相が示す、比熱や熱膨張係数のような熱力学的微分量が、結晶的な値から液体的な値へと僅かに急激変化する現象を指す[2]


・・つまり「石英ガラス=石英」ではない点をシッカリ認知するべきです[3](汗)

古典的精製手法に倣えば、水晶など石英を1,600℃以上で高温加熱し溶解させた後、急速に再凝結させると「溶解石英ガラス」が完成します。高純度の二酸化ケイ素 (SiO2) として精製されたと言えますが、天然材であるが故に不純物の含有量を無視できません(汗)

そこで不純物を徹底的に排除した人工的な石英ガラスを「合成石英ガラス」と呼称し、現在広く活用されています。ガラスから結晶への相転移温度が1000℃以上と高く、必然的に熱伝導率も驚異的に低く、且つ熱膨張係数も小さく、耐放射線性も高いと言う特徴があり、結果高出力レーザーや宇宙向け光学製品などにも向く素晴らしい素材だと指摘できます。

ここがポイントで、水晶や石英などを高温度帯 (1,600℃以上) で加熱させて溶解させた後、精製された資料はその徐冷後に結晶化してしまいます。しかし再加熱し適温度帯である1000℃以上にすることで「結晶質から非結晶質へと相転移が起きる」結果、その資料はガラス質 (つまり非結晶質/アモルファスな物質) へと相転移していると言えるのです。

相転移
物質が、異なる物理的構造 (物理的性質が均一で安定している状態を維持している状態のこと:液体/液相、個体/固相、気体/気相) へと変化する現象を指す。

ガラスのような非結晶質構造から、結晶質構造へと変化する過程を「相転移」と呼び (その逆も然り)、その際の温度帯をガラス転移温度 (Tg) と呼称します。Tgは非結晶質構造が、固くて脆いガラス状から、軟らかくて変形し易いゴム状構造へと変化していく温度帯を指します。

つまり結晶格子構造を持たないガラス (つまり非結晶質構造) の分子が、規則的格子構造を持つ「結晶質へと転移する相転移の現象」だと言えるワケです。

・・と如何にも熟知しているが如く語っていますが(汗)、実はまだまだ自分のコトバで述べられていません (つまりちゃんと理解できていない)。もしも詳細を知りたい方は「希土類材料研究センター:亀川厚則著」の解説をご覧頂くと簡潔に説明されています。

試しに現代に多用される「合成石英ガラス」精製術を探ると、例えば「青板ガラス」と呼ぶ「ソーダ石灰ガラス」は、現在の一般的な板ガラスの中でも特に平滑性に富み、歪みも少なく、建築用や自動車用、或いは産業用など広く活用されている透明ガラスの一つです[4]

その組成/成分を調べると、意外にも右一覧表のように様々な鉱物を含有していることが分かります。さらに屈折率:1.52ndであり、軟化温度帯が720℃〜730℃、そのモース硬度も約6.5度と言う諸元値なのが分かりました。

この結果、石英の溶融で必要とされる1,600℃から、凡そ1000℃程度まで劇的に低下させることが実現でき、特に工業分野で無くてはならない素材として弾みを得られたものの、このような組成では光学硝子レンズへの活用には適さないと考えられます(汗)

では光学硝子レンズに使われている「合成石英ガラス」とはどういったモノなのでしょうか。

🅲 不純物が極端に少ない合成石英ガラスの精製とは・・

現在では、大きく分けると2つの精製手法に大別されます。

直接法/化学気相堆積法CVD法 (chemical vapor deposition)」或いは「スート法/気相軸方向堆積法VAD法 (vapor-phase axial deposition)」です。

これらの専門用語を見てもまるでイメージが浮かびませんが(笑)、しかし「堆積」と言うコトバを含む点が、これら2つの精製手法に共通しています・・結晶ではなくて「堆積」です(笑)

そしてその「堆積」は、気相や基材表面層での化学反応により、薄膜が順次次第に堆積していくことを指し、その堆積層が「成長する」と表現できることが分かります・・結果、以下解説でも出てきますが「大きな塊として精製されていく/堆積して成長していく」との受け取りになります。

CVD法」は、気化させた資料「四塩化ケイ素 (SiCl4)」に酸素と水素を反応させつつ、石英ガラスの粒子状に精製させて堆積させていく手法であり、反応時に生成される水や塩酸などは炉外に排出され、且つ精製される石英ガラス粒が炉の内壁にも付着しない為、ほぼ不純物を含まない高純度での精製が実現でき、炉の設備規模にコストがかからないものの、最終的な堆積量は「インゴット化 (塊)」させて巨大な塊として精製できるメリットがあります。

VAD法」は、同じ資料「四塩化ケイ素 (SiCl4)」を使うものの、高温度帯を必要としない「ゾル-ゲル法 (sol-gel)」を使い、テトラエトキシシラン (別名テオス) と言う化合物とエタノール水溶液中で加水分解させて石英ガラスの多孔質ゲル状として生成し、次に乾燥の後に1,200℃以下で焼成させて水酸基を化学反応で脱水させてガラス化させる手法です。同じようにインゴット化が可能でも、数百キロにも及ぶインゴット化が可能なCVD法に比べると小規模に限定されます。
(いずれもNikonの解説を参考にしつつ、他にも調べてまとめ上げています)

ここでのポイントは前述のように「アモルファス状態にある」且つ「結晶化していないこと」を表すので (つまり石英ではない)、光学硝子レンズは「アモルファス物質」だと言っている話になり、だからこそ前のほうで「アモルファスに同義」と解説しました(汗)

これをこの際、さらに大袈裟に表現してしまうなら「ガラスは構造的に液体のような分子レベルのままである」ことになり、液体の分子は結晶格子を立体的に構成しない非結晶質であることが分かっています。例えば同じ非結晶質材を上げるならゴム材や樹脂材などもありますが、これらは厳密には「非晶質」と言うコトバのほうが化学的には適しているらしいです。

つまり非結晶質材たるガラスと、非晶質材たるゴム材や樹脂材とは、相対的に同義になるべき性質や特徴を持たないようなので難しいのです。

逆に言うなら「ガラスは結晶格子を持たない液体が粘度を究極に増して常温で個体化している物質」とも指摘でき、それを指して化学では「アモルファスな状態」と呼ぶらしいのです(驚)

こういう視点が必要になるのだと、今回探索していてオドロキしか残りませんでしたが、はたして身近な存在のガラスが分子レベルで液体と同じとは・・なかなかにSF映画を観ているような錯覚世界です!(笑)

何だかその昔、天動説と地動説が互いに敵対していた時代に居るかのような錯覚を覚えます(笑)・・手で触って硬い物質だと信じてやまなかったガラスの構造が、非結晶質で液体と同じとは、いったい何を頼りに信じれば良いのか、何だか足元がおぼつかない感じです(笑)

然しそう言われればと初めて合点がいきますが(汗)、確かに結晶している水晶などは、破壊する際に単一指向に割れますが、ガラス材はそのように破壊しません・・或る意味破壊の指向を予測するのは、相当に難儀な課題ではないかと思います(汗)

それが分子レベルで結晶格子を持っていないガラス質の『証』なのだと、理解できたようで、やっぱり当方のような低脳レベルでは対応できていないように感じますね(笑)

・・正直、化学は大の苦手分野だったり!(笑)

だいたい当方のような「自分の眼で視て触って納得できる世界でしか整備できない、低い技術スキルのオールドレンズ整備者」と言うのは、そのような確認をステップしていけない世界に生きることができません(笑)・・いわゆる感覚に頼った整備ができないが故に「プロの整備者たらない」をまるで地で証明しているかのような話なので、このような分子レベルの話になると、途端に逃げ出して隠れたくなります(汗)

然し実はこれら解説から次の項目の道理が通るワケで、なかなかにハードな世界です。

🅳 そこから視えてくる光学硝子レンズの表層変質・・

前述の精製手法を執り造られたインゴット「合成石英ガラス」としても、実は100%不純物を除去できていません。この不純物や精製時の温度調整の影響により、局所的に屈折率が変化してしまう部分が現れてしまいます。これを「脈理 (みゃくり)」と呼称し、インゴットのどの部分を取り出して使うのかにより「脈理」の量や質も異なり、或いは向きや方向まで違うことが分かっています。

さらにそもそも精製時に酸素や水素が関わる場合、精製されたインゴット「合成石英ガラス」には水 (OH基) が残留していることがあり、この量によっては特に赤外線域に近くなるなど、特定の波長に吸収反応が現れる弊害 (光学硝子レンズの基材内部に透過光が吸収されていき、失っていくから) も残ります。

従って製造メーカーはそれら「脈理」の有無や量に指向性、そして波長別の透過率の違いなど厳密に検査した上で様々な種類や質の「合成石英ガラス」として製品化しています (このことをグレードと言います)。結果、光学設計者はこれら製品グレードを厳格にチョイスして使う必要があるのです。

他方で、ガラスは非金属質であり無機材料 (組成に金属や炭素分子を含まない) であることの『証』と言えますが、このことは金属材に生ずる錆/サビ (空気中の酸素などとの結合)、或いは電食と呼ぶ異種金属材との接触により、電解作用の働きから水分との関係性による電位差により、イオン化傾向の強い側が腐食する現象とも無縁であると指摘できます。さらに樹脂材のように紫外線域の波長の照射を受け、炭素結合破壊の脅威/劣化に晒されることもありません。

・・ところが金属材とはまた異なる要因で、周囲の脅威に晒され続けていると言えるのです。

その最も明確な要素の一つが「」です(怖) ガラス材は「水に溶ける」と言えるものの (つまり溶解しないと断言できないから)、厳密に言えば「Na2O (酸化ナトリウム)」は水と激しく反応する為、可溶成分がアルカリイオン (Na+など) として水中に溶出していきます(汗) その結果、ガラス表層面には様々な化学変化が現れるのがリアルな現実です。

1つは経年の侵食により、ガラス表層面の組成成分に於いて、アルカリイオンが欠乏した不均質な層が形成されてしまった時、その屈折率の違いから光が干渉し、表面が虹色に反射しているように見える「プリズム現象」が起きます。これを一般的にガラス材の「青ヤケ」と呼び、光学清掃してもまるで除去できません (化学反応の結果なので、光学清掃で改善できない)。

さらにもう1つこのアルカリイオン溶出の影響が、同じガラス表層面にも顕れます。ガラス表層面で溶出したアルカリイオンを含有する水分が乾燥により凝縮され、空気中の「CO2 (炭酸ガス)」の作用により炭酸化物などが生成されてしまった時、その表層面にそれらが堆積してしまい「白ヤケ」を帯びます。これも同様に光学清掃などでは一切除去できません。

↑上に挙げた写真は、当方が今までに整備したオールドレンズの仕上がり後の個体写真ですが一例として掲示しました・・いずれも戦前〜戦中のノンコートモデルばかりです。その前玉の光学硝子レンズ表層面を光に翳して反射させてみると、ご覧のようにが「プリズム現象の青ヤケ」であり、が「白ヤケ」として明確に視認できますが、実は光に反射させない限り直視しても視えなかったりします (もちろん個体別に千差万別)(汗)

要は同一モデルならば同じ光学硝子レンズの組成成分のハズなのに、それぞれの個体が辿ってきた経年の状況が違うので、製産年度から逆算した経過年数に比例して、これらの現象が必ず発生するとは限らないのです。

これらはオールドレンズに実装している光学硝子レンズの経年劣化進行に伴う表層面の変質として掲示しましたが、これらの現象は一般的なガラス製品でも起きます。

そのような現象の原理と進行過程を説明すると以下のような模式図になります。「SiO2 (二酸化ケイ素/別名シリカ)」を主材とする光学硝子レンズ基材 (要は合成石英ガラス) のノンコート状態の露出表層面に、空気中に漂う水分が付着していった時の状況を想定しています[5]

←左図は、グレー色に色つけした光学硝子レンズの基材に対し、その表面に水分が付着している状況を模式図化しています。
光学硝子レンズの組成成分の中から、アルカリ
イオンの陽イオン (Na+やCa+) などが、化学反応により水分の中に溶出していきます (もちろん空気層にも溶出する)。

これの繰り返しにより光学硝子レンズ内のアルカリ成分が減少し、屈折が異なる薄層が表層面に形成されるため、水分が蒸発した後に「青ヤケ」として視認できるようになります・・プリズム現象の原理ですね。

つまり単に光学硝子レンズの表面に水分が付着していただけなのに、光学硝子レンズ内部の陽イオンの移動が促されていることを表しており、それを以て「溶出」と指摘できます。

の進行に伴い光学硝子レンズの表面に付着していた水分はその結果「NaOH (水酸化ナトリウム)」へと変質していきます。
水分の蒸発が促されつつ凝縮化が進行していくと今度はアルカリ性の強いNaOH溶液がガラスの表層面を侵食していきます(涙)

、さらに合わせて空気中のCO2 (二酸化炭素) の作用により、同時にCaCO3 (炭酸カルシウム) や Na2CO3 (炭酸ナトリウム) に NaHCO3 (炭酸水素ナトリウム) などが生成されていきます。
(赤色の塊)
特にそれら生成物は光学硝子レンズの表層面に侵食によって現れた非常に微細な凹凸面に堆積していくことになります。

、付着していた水分が完全に蒸発すると、それら生成物が残りますが、さらにその上から再び水分の付着が繰り返され、このようなを繰り返していくと、乾燥した光学硝子レンズの表層面は生成物が頑固に固着化してしまい、光学清掃では一切除去できなくなります。その状態を指して「白ヤケ」と指摘でき、同時に「青ヤケ」まで生ずることもあります。

例えば当方がオーバーホール済でヤフオク出品するオールドレンズの出品ページ内に「CO2溶解による微細な点キズ複数あり」と謳っている根拠が、このような解説からもご納得頂けると思いますし、これらの現象は特にオールドレンズに於いては「前玉や後玉の露出面だけの話だけに限定されない」ことを確実に認知するべきなのです!(怖)

・・つまりこれらの現象は、十分に光学系内の各群に於いても想定できる脅威

オールドレンズが実装している光学硝子レンズの各群は、どんなに締付環で硬締めしていたり「固着剤」を流し込んで締め付け固定していても、決して密閉されおらず、空気の通気はもちろんのこと水分もカビ菌の胞子まで自由自在に往来していることを覚悟するべきなのです(涙)

ここまで長文をお読み頂きありがとう御座いました。引き続き 🅴 以降の項目についてお読み頂けるなら、是非ご購読 (500円) 下さいませ。

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